歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件
でもライオネル様は真面目だから、婚約者のわたくしを律儀に毎日送り迎えをしてくれている。
先生に用事を頼まれたり生徒会の仕事で遅くなっても待っていてくれるし、ライオネル様の手が空いているときは手伝ってくれるのだ。
それが婚約者としてのお役目だから、仕方なくこなされているのだと思う。わたくしはそんなライオネル様の優しさに卑しくつけ込んでいた。
婚約が決まって初顔合わせをしたあの日、ひと目見た瞬間にわたくしはライオネル様に心奪われた。
こんな素敵な方の婚約者となれるのかと歓喜に震えた。
それからわたくしは婚約者の立場を死守しようと必死だった。少なくとも他のご令嬢に能力で劣らないように努力し、顔の作りはどうしようもないけど、美容にも気を使い女性としての美しさも高みを目指した。
とにかくライオネル様の婚約者であることを最大限に利用して、好かれるように努力した。
だからどんなに冷たく返されても、好意を全面に押し出してわたくしの気持ちが伝わるようにしてきた。それにそんなことで、わたくしの心に燃え盛る恋の炎は消えることがなかった。
だってそんなクールで落ち着いたライオネル様も、素敵なんですもの——!!
もう十年もそんな状態だった。