歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件
「それでは、まずはこの魔法誓約書にサインしてもらえる? 特別な魔道具を貸してあげるから、他言無用にしたいのよ」
「はい、承知しました!」
わたしは誰かに話すつもりもなかったから、喜んで魔法がかかった誓約書にサインした。そしてマリアン王女から受け取った魔道具は、憎い相手を呪う魔道具だった。
「いい? 思いっきり憎い相手を思い浮かべて魔力を流すのよ。そうしたらこの古代の魔道具が貴女の望みを叶えてくれるわ」
「それでは、思い浮かべる相手は、ハーミリアですね!」
マリアン様は優雅な微笑みを浮かべたままだ。間違いない、この魔道具でハーミリアに呪いをかけて、婚約者の座から引きずり落とせばいいのだ。そうすれば、その後はわたしがライオネル様の婚約者になれるようマリアン様が整えてくれるのだ。
「今日はタイミングが悪いから、明日の朝にしてほしいの」
「はい、承知しました!」
「そうね、明日の朝に生徒会室の鍵を開けておくから、そこで試すといいわ」
「はい、任せてください! 必ず成功させてみせます!」
マリアン王女は生徒会の副会長でもあるから、その方が都合がいいのかもしれない。家で試して家族に見つかっても、話すことができないから面倒なことになる。
わたしはマリアン王女に言われた通り、翌朝かなり早く登校して生徒会室にこっそりと忍び込んだ。