歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件
マリアン王女から渡された魔道具は手鏡の形をしている。見た目は黄金で装飾されて、赤い宝石が淵にはめ込まれていた。持ち手の部分は黒い布で巻かれている。
わたしは朝日が差し込む生徒会室で椅子に座り、ゆっくりと魔道具に魔力を流した。
想像以上に魔力を吸われていく、でもこれでライオネル様がわたしのものになるならどうってことない。
わたしは憎むべき相手であるハーミリアを頭に思い浮かべた。
あの女がいなければ、わたしがライオネル様の婚約者になれるのよ!
あの女なんていなくなればいい! ハーミリア・マルグレンなど、この世から消えてしまえ——
ありったけの憎しみを込めて魔力を流し切った。
「……あれ? ちゃんとできたのかしら?」
不安に思ってもう一度魔力を流し込んだその時だ、息もできないほどの強烈な痛みに襲われた。
「——っ!!」
椅子に座っていられなくて、大きな音を立てて転げ落ちる。でも早朝の生徒会室の近くには誰もいなくて、わたしの惨状に誰も気がついてくれない。