歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件

「ハーミリアは僕の隣の席と決まっているから、そのつもりでいて」 
「まあ、それでは授業に身が入りませんわ」
「どうして?」
「だってライオネル様ばかり見てしまいますもの」
「ハーミリア……それなら放課後は一緒に復習しよう。僕はもう学業を修めているから教えてあげるよ」
「さすがライオネル様です! わたくしにはすぎた婚約者ですわ」

 周囲の空気が若干おかしい気がしたけれど、そんなことは気にならない。ざわつきはどんどん大きくなり、やがて数人の生徒たちが短い悲鳴をあげる。
 ライオネル様の甘い魅力に浮かれていたわたくしは、ある女生徒が近づいてきているのに気が付かなかった。

「亜w瀬drftgyふじこ!!!!!!」

 声の方へ振り返るとわたくしが目をつけていたドリカさんが、ギラギラとした瞳で睨みつけていた。
 髪は振り乱れやつれた様子なのに、瞳だけは爛々としている。

「貴様、なぜここにいる?」

 絶対零度の声音にビクリと身体が震えた。ライオネル様がこんなにも、敵意を剥き出しにするのは初めてだ。
 わたくしを背中に隠して、ドリカさんと対峙する。
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