歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件
ライオネル様は一瞬でドリカさんを氷漬けにした。
青みがかった透明の美しい氷の柱に閉ざされ、ドリカさんはやっと動きを止めた。
パンパンに腫れ上がった顔がとても痛ましい。こんなになるまで痛んだのなら、それは地獄のようだろうと想像できた。
駆けつけた学院専属の護衛騎士たちに、ライオネル様が氷の柱ごと引き渡して事態は収束する。
「ハーミリア、大丈夫か? 怖い思いをさせてすまなかった」
「いえ、大丈夫ですわ。ドリカ様が本当に犯人ですの?」
「ああ、僕が無理やり婚約をさせられていると勘違いした挙句、ハーミリアの命を狙って呪いをかけたんだ。まったく、事実は逆だというのに、なぜあのように思い込めるのかわからない」
なにかサラッと重大な事実をこぼされたようですけど、わたくしが聞き返す前にライオネル様が言葉を続ける。
「牢獄に入れようとしたのに、モロン男爵が屋敷で監視すると言うので任せたのが間違いだった。まあ、でもこれで一族ごと追い込めるか。それにしても、どうやって屋敷から抜け出してきたのか……まともに動けない様子だったのだが」
ライオネル様に感じた黒いものが、とめどなくあふれ出している。それも素敵なのだけど、もうひとつ気になることがあるのだ。