歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件
「でもよくドリカさんのお話ししていることがわかりましたわね?」
「ああ、読唇術ができるんだ。顔が腫れていて少々わかりにくかったが」
そんなことまで努力で身につけられたというの!?
さすがライオネル様ですわ!
「それでは、ハーミリア。行こうか」
「はい!」
何事もなかったかのように、ライオネル様は足を進める。
これほど沈着冷静で心を動かさないライオネル様が、わたくしにだけ見せてくれるとろける笑顔は最高のご褒美のようだった。
そして、その日の帰りの馬車でライオネル様がとんでもないことを言い出した。
「ハーミリア、学園一のラブラブバカップルになろう」
「はい……?」
ライオネル様の斜め上すぎる発言に、さすがのわたくしも目が点になった。
「いや、今回のことを踏まえて考えたんだ。僕がハーミリアを心から愛していると周知すれば、少なくともこんな勘違いをされないだろう」
「それは、そうかもしれませんけれど。それがどうしてラブラブバカップルなのですか?」
「うん、僕の目的はみんなが呆れるほど、ハーミリアに惚れ込んでいると理解してもらい何者も僕達の間に入ってこられないようにしたいんだ」