歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件
まるで決戦前夜のような真剣な表情のライオネル様を、しっかりと心に焼き付けてから返事をする。
「もうわたくしたちの間に入ることなどできませんわ」
「そんなことはない! 僕がエスコートしているのに恥ずかしがるハーミリアに秋波を送る男子生徒のなんて多かったことか!!」
グッと握った拳はぶるぶると震えている。ライオネル様は大袈裟だ。
「わたくしにそんな視線を向けてくる男子生徒なんておりませんわ」
「……今日だけでも五人に牽制したんだ、間違いない」
「むしろ、ライオネル様の方が女性との視線を釘付けにしていましたわ」
「僕はハーミリアにしか興味がないから問題ない」
いえ、それはそれで嬉しいのですけれど。
ライオネル様からもれ出す甘い空気に引き寄せられる女生徒が多すぎるし、ラブラブバカップルというのがどういうものかちょっと気になりますわ。
「わかりましたわ。ここはラブラブバカップルを目指すしかないようですわね」
「ああ、ハーミリア、明日からさらに遠慮なく愛を注ぐよ」
え?
今日のでもまだ遠慮されてましたの?
なんて思っても、ライオネル様の激情を秘めたアイスブルーの瞳から視線を逸らせなかった。