歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件
     * * *

「まあ……男爵令嬢など役に立たないわねぇ……」

 私は思わずため息とともにこぼした。
 ある目的のために手駒になりそうな女を見つけたので使ってみたけど、ひと目で呪いに失敗したのだとわかった。まるで役に立たないなら、もう必要ない。

 興味をなくしたので、そのまま生徒会室へと向かう。あの男爵令嬢に渡した古代の魔道具を回収するためだ。ローザとテオフィルが先に到着してそれぞれ役目をこなしていた。

 テオフィルは男爵令嬢に付き添って治療院へ行き、モロン男爵に接触を図り原因不明の病だと吹き込む。ローザは魔道具の回収だ。私が王城の宝物庫から持ち出したの隠すために、別の魔道具を仕込むように伝えてあった。

「ローザ、もう準備は整ったかしら?」
「はい、マリアン様。この魔道具でしたら怪しまれません。それでは先生を呼んでまいります」
「ええ、お願いね」

 ひとり生徒会室に残り窓から通学路を見下ろすと、私の想い人であるライオネル様が忌々しい婚約者をエスコートして校舎に入るところだった。

 侯爵家の嫡男で眉目秀麗の上、学業は常にトップ。公明正大な人柄は多くの生徒の信頼を集めている。魔法はすでにプロの域に達していて、魔法連盟からスカウトも来ていると聞く。剣術は苦手らしいけど、それでも平均より上だ。
 第三王女の私にこそふさわしい、完璧な男はライオネル様しかいない。
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