歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件
でも、思ったよりいい仕事をした男爵令嬢は、ハーミリアを病気療養に追い込んだ。
笑いが込み上げて仕方ないけど、嬉しさを隠して魔法学の教室へ移動中のライオネル様に近づく。
「ライオネル様、婚約者様がお休みですと心配ですわね」
「……マリアン様、ええ、そうなんです。本当は今すぐにでも駆けつけたいのですが、やはり早退してまで向かうのは婚約者としてダメかと思うと……身動きが取れなくてどうにもならないんです」
憔悴した様子にいつもの覇気を感じなくて驚いたけど、このチャンスをものにするために意識を切り替えた。
「よろしければ症状に合う薬を王城の薬草園で見繕うこともできますから、ランチをご一緒しませんこと?」
「本当ですか!? それでは、今日ハーミリアに会って確認してきますので、ランチは明日でもよろしいですか?」
ライオネル様の言葉に私は驚いた。第三王女である私が今日のランチに誘っているのに、断るなんて思ってもみなかった。こんな真面目なところも素敵だけれど、貴重なタイミングを無駄にしたくない。
「え、明日?」
「はい、今日は体調がすぐれないので学院を休むとしか聞いておりませんので、お話しできることがないのです」
「それでは今日のランチでは私がライオネル様の憂いを払ってさしあげますわ」
「声をかけていただいたのに申し訳ないですが、本当に今日は食欲がないので……」