歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件
「ちなみになんてお呼びするんですか?」
「ハーミリアだから……リアと……」
ハーミリアの名を聞いた時からずっと想像していた。てっきり家族になってから親しみを込めて呼ぶものだと我慢していたが、本当は今すぐにでも愛称で呼びたかった。
なんのてらいもなく互いを愛称で呼び合うカップルが羨ましくて仕方なかった。
「いいですね、ハーミリア様にぴったりの愛称です」
「ああ、そうだろう! 可憐で優雅で美しさを表現できる最高の愛称だっ!」
「で、練習しますか?」
「練習?」
ジークの言葉になんのことかと考える。
「ハーミリア様を前にして、いきなり本番で呼べますか?」
「うっ……そ、それは……」
僕のことをよく知るジークの言葉は、グサリと胸に突き刺さる。確かにハーミリアを前にして、愛称で呼べるかと言われたら自信がない。
「ライオネル様、ここはスマートになるまで練習しておいた方がいいですよ。仕方ないから練習に付き合ってあげます」
「ジーク……! 本当に不器用な僕ですまない……!」
仕方ないと言いつつも、その瞳に優しい光が浮かんでいる。ジークはいつもこうやってさりげなく僕を助けてくれるのだ。
「いいですよ、これはこれで面白いですから」
「うん? 面白い?」
「ほら、さっさと練習しましょう。さあ、私をハーミリア様だと思って愛称で呼んでみてください」
「わ、わかった!」