歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件

 あら? サーモンサンドはお好きでなかったのかしら? 前回よりも渋いお顔になっていらっしゃるわ。
 交換まで申し出てくださったのに……ああ、そうか。これも婚約者としての勤めで演出してくださっているのね。
 次があったら違うものにしましょう。

 失敗は次回の糧にして、わたくしもライオネル様のランチボックスをいただく。
 蓋を開けてみると、なんということかわたくしの大好物ばかりが入っていた。きっとこの演出のために料理人に用意させてくれたのだろう。
 こう見えてわたくしはお肉が大好きなので、ポークやチキン、ビーフのボリュームたっぷりなバケットサンドを頬張った。

 わたくしもまだまだですわ。ライオネル様のお心遣いに負けないように、精進しないと!

 こうして楽しいランチタイムが終わり、それぞれのクラスに戻る時間になってしまった。

「ライオネル様、今日のランチはとても素敵でしたわ! わたくしこういう恋愛小説に出てくるようなシチュエーションに憧れてましたの! 本当にありがとうございます!」
「っ!」

 満面の笑みを浮かべてライオネル様にお礼を伝えると、一瞬ビクリと震えてサッと美しお顔を逸らされてしまう。
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