歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件

 いけませんわ、思わず食い気味で返事をしてしまいましたわ。たとえ目的のためであっても、ライオネル様を愛称呼びできるのであれば、このチャンスを逃すわけにはいきませんわっ!

「では、僕は……リ、リアと呼ぼう」
「っ!!!!」

 なんてこと! なんて破壊力なのっ! 照れながらわたくしの愛称を呼ぶライオネル様が、尊すぎるわ——っ!!!!
 
「リア。リアにも僕の愛称を呼んでほしい」

 なんですの! 頬を染めながら、なんなら耳まで赤くしながら、控えめにかわいくお願いしてくるライオネル様が今生(こんじょう)で目にできるなんて、想像もしてませんでしたわ!!

「ライ……ああ! どうしましょう! ちょっと心の準備をいたしますので、お時間をいただいてもよろしいですか!?」
「え……もしかして嫌だった? いや、それなら今まで通りで……」

 それはもう悲しげに眉尻を下げるライオネル様も、麗しくて素敵と思いながら全力で否定する。
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