歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件

「違いますの! あまりにも夢に見ていたことですから、興奮しすぎてしまって身体がついてこないだけですの。心の準備ができれば問題ありませんわ!」
「嫌では……ない?」
「もちろんですわっ!!」

 それはもう力強く肯定する。わたくしから攻めるのは得意だけど、ライオネル様からグイグイ攻められると心の準備ができてなくて狼狽えてしまう。せっかく素晴らしい提案をしてくださったのに、本当にもったいない。

「よかった、実は僕も昨夜練習したんだ」

 ふにゃりと笑うライオネル様に胸を撃ち抜かれ、息も絶え絶えになりながら馬車から降りた。わたくしの寿命が日々縮まっているような気がする。
 ダメよ、ライオネル様と一緒に過ごすのなら、なんとしても長生きしなければ。

「ライオネル様。わたくし心の準備をしますので、今日のランチは別々にしていただけませんか?」
「そうか……ランチの時間は残念だけど、仕方ないな。それなら魔法練習場にいるから、なにかあったら来てくれ」
「わかりましたわ! 必ずや、己の心身を整えてまいります!」

 これは、なんとしてでもランチの時間でライオネル様を愛称で呼べるようにしなければ……!!


< 91 / 208 >

この作品をシェア

pagetop