歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件

「あらあら、朝から仲がいいこと」

 金色の髪をなびかせて、笑顔を浮かべたマリアン王女が声をかけてきた。若干口元が歪んでいるので、どうやら機嫌が悪いらしい。最近は苛立っている様子をよくお見かけする。

 生徒に分け隔てなく接しているようで、実は選民意識の強いお方だ。言葉の端々に滲み出ていたから、同じクラスになってすぐに理解した。
 王女様とはいえ、あまりライル様に近づいてほしくないタイプだ。

「マリアン様、おはようございます。ライル様はとてもお優しいので、いつも気遣ってくださるのですわ」
「おはようございます、マリアン様。お騒がせして申し訳ありません。僕が心配性なだけなのです」
「仲がよろしいのは結構なことですわ。けれど、今日はお兄様のことでライオネル様に相談したいことがあるのですわ。お借りしてもよろしいかしら?」

 お兄様というのは王太子殿下のことだ。ライル様は王太子殿下の側近だからそう言われてしまえば断ることなどできない。それでもライル様が渋いお顔で躊躇している。
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