BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
 ――ダメ……。直視できない。
 とうとうジーニアは両手で顔を覆ってしまった。

「ジーニア嬢、すまない……」
 クラレンスの辛そうな声が、頭上から降ってきた。
「君に、このような醜い傷痕を残したばかりでなく、呪詛まで。君の泣きたい気持ちもわからなくはないのだが、その、泣き止んでもらえると、助かる……」

 尊さに耐えられず両手で顔を覆ったジーニアが、どうやら泣いているようだ、とクラレンスは思ったらしい。
 その手を退けたらニヤニヤとした、だらしのない顔のジーニアがいるだけ。ジーニアは、顔を引き締めて、少しだけ切ない表情を作ってその手をどかした。

「すみません……。泣いていた、わけではないのです……。少し、想うところがありまして……」
 呪詛の件ではない。もちろん、目の前のクラシリだ。

「シリル。今すぐ王宮魔導士に連絡を入れろ」

「承知しました」
 綺麗に一礼したシリルは、身を翻して部屋を出ていく。
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