BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
「私たちは、戻る。何かあったら、遠慮なく人を呼びなさい」
 クラレンスは言うが、この場合、呼びつける相手として正しいのは侍女のルイーズだろう。間違えてもクラレンスを呼びつけてはならない、とジーニアの第六感が囁いていた。
 ジーニアを研究対象としてもう少し観察したいと騒ぐジュードは、ミックに引きずられるようにして部屋を出て行った。グレアムも、ジェレミーとジーニアに頭を下げると黙って部屋を出ていく。

 部屋に残されたのは兄妹二人きり。
 ジェレミーはジーニアの寝台の脇に置いてある椅子に腰かけた。先ほどまでクラレンスが座っていた場所だ。

「ジーニア。具合はどうなんだ?」
 先ほどまで人がたくさんいたから、聞きたくても聞けなかった。ジュードが口にしていた呪詛の件も、理解はできるが納得ができなかった。
「先ほど、ジュード殿が言っていたことは本当なのか? その、お前の命があと十日程というのは」

「ジュード様がおっしゃるにはそのようですが。私も、まだ実感が湧きません。ただ、今はこうしてお兄さまとお話ができていますが、先ほどまでは呼吸するほども苦しくて、胸が痛くて、意識を失うくらいだったのです」

 だからジェレミーが呼ばれた。妹の急変、ということで。

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