BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
「おい、ジーニア大丈夫か?」

 ――大丈夫では、ありません……。
 答えたいのに、声が出ない。

「おい、ジーニア」
 目の前のジェレミーの声は聞こえるのだが、肝心のその姿が見えない。

「ジェレミー殿。そこを退いてくれ」
 ジュードの声が近くで聞こえてきた。身体を支えられ、心音を確認するかのようにジュードが胸元に耳を寄せたことにも気付く。だが、ジーニアは自分で身体を支えることができない。
「おい。まだ時間はあるんじゃなかったのか? その呪いの全てが発動するまでは。そう言っていたよな」
 クラレンスが少し怒ったような口調で問うている。みんなの声は聞こえる。だけど、ジーニアの身体に力が入らないのだ。
 それに目の前は真っ暗で、何も見えない。聞こえてくる声でしか想像するしかない。

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