BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
 ジーニアは瞼をゆっくりと開けようと力を込める。

「ジーニア嬢」

 ジーニアはやっと眩しい光を感じることができた。目の前にはクラレンスの端正でありながらも、切なそうな顔がある。

「クラレンス様……。ご迷惑を、おかけして、申し訳、ありません……」

「ジーニア嬢。私がわかるのか? 見えているのか? それに言葉も」

 まだ頷くことはできない。動かせるのは唇と視線のみ。「はい」と小さく答える。なぜにその二つが動くようになったのかジーニアはわからない。だけど、暗闇の世界から戻された安堵感は大きい。

「私はこれから君の呪いを解くために、君を抱く」

「はい……」

 怖いけれど、不思議と嫌だという気持ちは無かった。ただ、身体を動かせないことだけがもどかしい。
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