BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
「あははは。あのくらいで酔いつぶれるようなトンプソン家の男ではないからな」
 父親は、息子と酒を飲んだのがよっぽど楽しかったのか、目尻を下げて朝から豪快に笑っていた。その父親を冷たい視線で見つめる母親。この二人に何があったのかは聞かないでおこう。

「お兄さまは今日、あちらに戻られるのですね」
 ジェレミーは、王城の敷地内にある、騎士団の宿舎に常駐している。何かの呼び出しにすぐ応えられるように、と。

「ああ。だが、次の休暇にはまた戻ってくるつもりだが……。そうなると、もしかしたらジーンとは入れ違いになってしまうかもしれないな」

 ――ん? 入れ違い? あ、そうだった。私、王城で侍女として働くんだった。

 中の人の記憶に侵されて、ジーニア自身の記憶を失うところだった。そう、ジーニアは行儀見習いも兼ねて、王城の王族付きの侍女として働くことになっている。侍女にはそれなりの家柄も求められるのだが、兄のジェレミーも第五騎士隊の隊長を務めるくらいの家柄であるため、侍女になるには相応しい身分を持っていたようだ。

 ――ナイス、ジーニア。さすが、ジーニア。天才としかいいようがないわ。

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