BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
「あら、あなた。ジェミーもジーンも、王城にいくからって、田舎の領地に戻ろうとしていたところではなくて?」

「そう、だったかな?」

「そうだったかな、ではなく、そうです。こちらの屋敷はジェレミーに譲って、あなたは田舎でのんびりと暮らすっておっしゃっていたのでは?」

「そう、だったかな?」

「そうです」
 大抵、父親と母親の会話はこんな感じだ。こう見えてもこの父も、花形の第一騎士隊、つまり護衛騎士隊の隊長を務めあげたというのだから、信じられない。そして、王城で侍女として働いていた母親を見初めてという話は、幼い頃から耳にタコができるくらいに聞かされていた話。

「お父さまもお母さまも、あちらに戻られてしまうのですか?」
 ジーニアがしゅんとしながら尋ねた。

「ジーン。そんなに悲しまないでおくれ。シーズンにはこちらに滞在することになるだろうけど。あちらにいる、お祖父さまも高齢だからね。それで、こちらとあちらの半々くらいで、と思っているところだ」
 田舎にあるトンプソン領の屋敷には、ジーニアの祖父が住んでいる。その領地をまとめているのが祖父なのだ。ジーニアは父親が言わんとしていることをなんとなく察した。

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