BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
「ジーン、そろそろ中に入りましょう」
 もちろん、ジーニアとヘレナのように会場の外で談笑に耽っている者もまだいるが、そろそろパーティが始まる。
 二人は顔を見合わせて頷き合えば、会場の中へと足を踏み入れた。
 この世にこのような華やかな場所が存在するのか、と、ジーニアの中の人は思っていた。キラキラと重厚なシャンデリラが輝き、誰が降りてくるのかわからないような螺旋階段。テーブルが置かれている場所と、楽団が控えている場所と。恐らく、あそこのスペースがダンススペースなのだろう。そして謎の雛壇とでっぷりとした豪勢な椅子。

「いよいよね」
 ヘレナの言葉にジーニアもごくりと唾を飲み込む。
 そう、これからクラレンスとジーニアの生死をかけたイベントが始まる。そもそもジーニアはモブ的扱いなので、どうなっても構わない立場ではあるのだが。だからって、素直に死んでやろうと思っているわけでもない。むしろ、生きてやる。生きて生きて生き抜いて、あの六人の幸せの行方を見守ってやる。

 ピーンと空気が張りつめた。楽団の音楽が鳴り始める。
「ジーン、始まるわよ」
 ヘレナの言葉に頷く。
 誰が降りてくるかわからないような螺旋階段から、この国の国王夫妻、そして王子と王女が降りてきた。そうか、螺旋階段はこういった重鎮の登場のパフォーマンスに使われるのか、とジーニアは一人で納得する。

 ――クラレンス様……。

 落ち着いた動作で階段を下りてくるクラレンスに、ジーニアは目が離せなかった。
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