BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
 わけのわからない形式的な式は進んでいく。とにかく二人にとって興味があるのは乾杯の儀に使用するグラスを、クラレンスが誰からもらい受けるのかということ。他に彼にグラスを渡しそうな人間がいないかを、ジーニアは鋭い視線で観察をしていた。極力顔を動かさず、視線だけで。
 そのとき、視界の隅に入った人物がいる。

 ――いた……。ジュードさま……。

 どうやらジュードはクラレンスと反対の位置に立っていたようだ。こちらが王族関係者の集まりであれば、あちらが騎士団や魔術師団の偉い人たちの集まりなのだろう。ジュードがいればミックもどこかにいるはずだ、ということを期待したのだが彼はしがない事務官。このようなパーティのあちら側に出席できるような立場ではない。

 ――この場でジュミーは拝めないのか……。

 恐らくミックは他の部屋で控えているのだろう。あのジュードのことだから、必要最小限だけ出席したら、途中で抜け出すに決まっている。
 会場が少し騒がしくなってきたことで、ジーニアは我に返った。給仕たちが、参加者にグラスを手渡している。
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