BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
 ジーニアは慌てて穴が開いていると思われる胸を覗き込んだ。だが、幸いなことに穴はない。
 くくっと笑い声が聞こえてきた。それも二人分。

「貫通はしていない。それに女性はドレスを着るためにコルセットというものをつけるのだろう? それが、矢が深く刺さるのを防いでくれたようだ」

「ああ、そうなんですね。よかったです。穴が開かなくて」

「そうだな。穴が開いたら、恐らく今頃君はここにはいないだろうな」

 クラレンスはまたくくっと笑った。
 これではジーニアのクラレンスに対する評価がかわってしまうだろう。スパダリはどこへいってしまったのか、と。いや、スパダリに違いは無い。高収入だと思う、というよりは金を持っているだろうこの男。社会的地位もある、そもそも王太子だ。将来の国王だ。そして、この輝くような美貌。直視したら目が焦げてしまうほど眩しい美貌。スパダリの要素は満たしている。だが、彼はもう少しクールなイメージがあったのだが、目の前の彼はジーニアをいじって楽しんでいる、ただの近所の悪ガキのようだ。

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