BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
「ジーニア嬢、目が覚めたばかりのところを押しかけてしまい、申し訳ありませんでした。少し落ち着いたころ、また来ます」
 すっとシリルが立ち上がる。クラレンスは名残惜しそうにジーニアに視線を向けてから立ち上がった。

「今、侍女を呼んでこよう」

「ありがとうございます。あ、あのクラレンス様」

「どうかしたのか?」

「ちなみに、こちらはどこでしょうか。肝心のそれを聞くことを忘れておりました。トンプソン家の屋敷ではない、ということだけはわかったのですが」

「王城内の一室だ。この部屋は君のために準備をしたのだから、遠慮なくここで養生するがいい」
 遠慮なくと言われても、王城内の一室と聞いた時点で遠慮が生まれてしまう。

「お気遣い、感謝いたします」
 ジーニアは、去り行く二人の背を見送って、早く侍女がこの場に来てくれることだけを願っていた。
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