BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
 ――あ、まずい。もしかして、シリル様。お怒りになられたかしら。

 他の人間の上で無防備に寝ている姿を見せつけられたシリルが、平静を保てるとは思わないジーニア。今、彼女は心の中で大量の汗をかいていた。だからといって、クラレンスを起こして、無理矢理引きはがすのもわざとらしい。

「ジーニア嬢。騙されてはなりません。殿下は、眠ってなどおりませんよ」

 ――え、えぇっ。な、なんだってぇえええ?

「シリル。ネタをばらすのが早い。私は今、休憩中だ。あと十分ほど休憩したら、お前の元に向かおうとしていた」

「殿下。休憩するなら普通に休憩してください」
 シリルが困った様に、短く息を吐いた。

 それよりも困っているのはジーニアである。まだ彼女の足にはクラレンスの頭が乗せられたまま。起きているのであれば、さっさとそこから退いていただきたい。

「クラレンス様、ジーニア嬢も困っております。そろそろ身体を起こしてください」

「ちっ。お前さえこなければ、もう少し堪能できたものを。これだから優秀な部下がいると困るんだよ」
 クラレンスはしぶしぶといった様子で、身体を起こした。
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