BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
「……っ」
 そんな小動物のような動きのせいか、傷口が引き攣れた。

「ジーニア嬢、大丈夫ですか? やはり傷口が痛むのですね」
 ジーニアの身体がふわりと浮いたような気がしたのは、グレアムが彼女の身体を持ち上げたから。乱暴に持ち上げたのではない。背中と太腿に手を入れて、優しくふわりと。いわゆる横抱きというもの。

「え、ええっ」

 急に横抱きされてしまったジーニアとしては驚くことしかできない。しかも相手はあのグレアム。

「グレアム様。その、恥ずかしいのでおろしてください」
 ジーニアが恥ずかしいと口をするにも理由がある。ここは人通りがある場所だから。そしてこの廊下を進み、突き当りを右へ、さらに進んで突き当りを左側に進めば、ジーニアが与えられた部屋で、その部屋の付近まで行けば人の行き交いも減るのだが。

「ですが。ジーニア嬢は怪我をされているし、今も痛む様子。無理をされては怪我の治りが遅くなります。そうなれば隊長も心配されるので。今はこうして私を頼ってください」

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