BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
 ジーニアをじっと見つめていたクラレンスがジーニアの背に触れる。何もしなければなんとも感じないそこであるが、そのように触れられてしまったら、顔をしかめてしまう。

「見せてみろ。薬を塗ってやる」

「いえいえ。そんな、クラレンス様にそのようなことをしていただくなんて、恐れ多いです。あの、ルイーズに頼みますから」

「なんだ。この私が直々に、君に礼を兼ねて薬を塗ってやろうと言っているのに。君はこの私からのその好意を、断るというのか?」
 断ることができないような、ところどころ棘があるような言い方をされてしまう。
「それに、以前も薬を塗ってあげたことがあっただろう? 今さら、恐れ戦く必要はない」
 クラレンスは立ち上がると、鏡台の上に並べてある薬を一つ手にする。それが、傷痕に塗るための塗り薬。

「傷口を見せろ」

 有無を言わさぬ凄みがある。これでは、鳥のような心を持つジーニアには断ることができない。
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