BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
 この部屋で養生しているため、いつも身に纏っているのはシュミーズドレス。コルセットのような身体をぎちぎちと締め付けるようなものは、傷口にも負担がかかるという医師の言葉に従っているためだ。仕方なく、ジーニアはドレスの左側の肩をするりと落とした。そちら側の背が矢の刺さったと言われる場所。傷口を守るようにガーゼで覆われている。そのガーゼを剥がし、クラレンスが薬を塗りつける。

「ひっ……」
 ひんやりとした手が背に触れたため、ジーニアは思わず声を漏らしてしまった。急にヒヤッとしたものが触れてしまったら、誰でもそうなってしまうだろう。そんなジーニアの様子を、クラレンスはくくっと喉の奥で笑いながら、薬を塗っていた。そして、新しいガーゼで覆う。

「傷の治りが遅いようにも見えるな。医師に文句を言った方がいいな」

「そうなのですか?」
 ジーニアは自分で自分の傷口を見ることができない。だから、その傷の治りが遅いか早いのかということもわからない。
「ああ。確認のために、もう少し触れるが、いいか?」
 ここでジーニアが駄目だと言えるような強靭な精神を持ち合わせていたら「駄目です」と即答する。だが、そんなことできるわけが無い。何しろ相手がクラレンスなのだから。

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