悪役令嬢のはずなのに!?〜いつのまにか溺愛ルートに入ってたみたいです〜
王城内に入り通路に並ぶドアの一室に案内された。
案内された室内には全身を映す鏡台が置かれ
サイドのテーブルに高そうな化粧品が多数並ぶ。
鏡台の前に置かれたソファに腰かける。
私は期待を込めてアレンを見た。
アレンは緊張した趣で
「よろしければ目を閉じて下さい。」と告げた。
「え!見てちゃだめ?」
予想外の言葉から、つい本音が溢れた。
アレンは困ったように笑う。
「期待していただく様な魔法ではありません。」
アレンにとってクロウド家の人間は雲の上の存在だ。
クロウド家に務めることは魔法使いの誉として
毎年、世界中から高レベルの魔法使いが集まる。
クロウド家の執事や侍女でさえ上級魔導士であったりする。
そんなクロウド家の一人娘である私は
たしかに魔法が溢れる環境で育った。
それでも…
前世日本人の私にとっての魔法は魅力的で
いろんな魔法を見るたびわくわくドキドキして
目を輝かせてしまう。この気持ちは抑えられない。
それに、
産まれた時から身体の中に魔力は存在するが
魔法が使用できない様に10歳までは封印される。
(使い方次第で死を招く危険なものだからだ。)
家庭教師や学園でしっかり基礎を学び、
感情のコントロールができる様になるまで
おあずけ状態なのだ!
6歳のティアナが魔法が使えるまで後4年!
それまで我慢するなんてできない!
自分が使えないなら他人の魔法を見るしかない!
「…私、魔法が好きなの!」
私はアレンの瞳を真剣に見つめる。
「だから
いろんな魔法をたくさん見たいし
たくさん知りたい!」
素直な気持ちをぶつけた。
アレンはもう何も言わなかった。
アレンが呪文のようなものを唱え
スカートにあるシミに手を添えると
添えた右手からパァッとが光が広がった。
眩しくて思わず瞬きをしている間に
右手から放たれる光は、
雲の間から差し込む太陽のように
スカートを優しく照らし始めた。
光の中を飛び交う白いきらめきが
オレンジのシミに降り注ぐ。
光に触れたオレンジの液体は
手に吸い込まれていくように宙に舞い
やがて大きな一塊になった。
いつのまにか左手に持っていたグラスを
浮かんだ液体の下に添えると
液体はコップの中に落ちていく。
液体を落とし終えると光はふっと消えた。
魔法を見てすごいなと思ったことは多々あるが
綺麗だと思ったのは初めてだった。
「わぁ~!」
私は目を輝かせて
興奮気味にアレンが持つコップに手を伸ばした。
「見せて!」
半ば奪い取る勢いでコップを受け取り
中に入った液体を揺らし匂いを嗅いでみた。
・・柑橘系の匂いがする。
こくっ
気になる衝動を抑えきれず思わず飲んでしまった。
・・思った通り、オレンジジュースの味がした。
「ク、クロウド公爵令嬢っ!!」
目を見開き驚いたようにアレンが
両手で持っていたコップを奪った。
少し恥ずかしくなって
ごまかすようにアレンに笑いかけた。
「綺麗だったからつい・・」
驚きに少し固まった後、
おそるおそるといった感じでアレンに尋ねられた。
「クロウド様は
笑わないのですか?」
「?」
言葉の意味が分からず首を傾げる。
「私は、あまり魔法が得意ではありません」
アレンが目を塞ぎがちに話す。
「今の魔法は下級魔法の一種です。
一般的にクリーニング魔法は
スカートに手を添えると
シミは光り空気に蒸発して消えます。」
サラマン家は代々騎士を輩出する侯爵位の貴族だ。
騎士家系では物心つくころから剣の練習に明け暮れ、
強さこそ正義だと毎日毎日鍛えられる。
剣術を鍛えて鍛えて鍛えて、
10歳になると更なる強さを求めて魔法を学ぶ。
火が使えれば炎を纏う剣になるし
風が扱えれば素早さを上げられるのだ。
私のお父様は実力主義者で
魔法が使えるかどうかなんて気にしない。
それでも、魔法が使えるかどうかは勝敗に大きな差をつける。
どれだけ剣術が優れていても純粋な剣術だけでは
魔法剣術には勝てないのだ。
現に、「上級騎士」以上の序列が存在しないことが
それを物語っている。
「サラマン侯爵も
水の使い手だったよね?」
サラマン侯爵も王国騎士団の一員だ。
「はい。父は上級魔法であり
氷を扱うのに長けています。
しかし・・
私には魔法の才能がありませんでした。」
肩をすくめ悲しそうに笑った。
魔力の強さや魔法のセンスは
王国騎士団にとって大変重宝される。
その反面、
魔力が低かったり使えなかったりする人は
見下され憐みの対象となるのだ。
「綺麗だった。」
私は素直な感想を告げた
「綺麗で・・優しかった。」
アレンはキョトンとした顔をしている
「魔力が高い人はたしかに強い。
でもそれは、"闘う上で"の話。
お父様が言ってたの。
魔法を見れば
その人の"本質"が見える。」
アレンの瞳をまっすぐ見上げた
「あなたの魔法は綺麗で優しい。
きっと、
"守るため"に正しい力を使える人。」
・・私は確信している。
「あなたは強くなる。」
あなたの未来を知っているから。
案内された室内には全身を映す鏡台が置かれ
サイドのテーブルに高そうな化粧品が多数並ぶ。
鏡台の前に置かれたソファに腰かける。
私は期待を込めてアレンを見た。
アレンは緊張した趣で
「よろしければ目を閉じて下さい。」と告げた。
「え!見てちゃだめ?」
予想外の言葉から、つい本音が溢れた。
アレンは困ったように笑う。
「期待していただく様な魔法ではありません。」
アレンにとってクロウド家の人間は雲の上の存在だ。
クロウド家に務めることは魔法使いの誉として
毎年、世界中から高レベルの魔法使いが集まる。
クロウド家の執事や侍女でさえ上級魔導士であったりする。
そんなクロウド家の一人娘である私は
たしかに魔法が溢れる環境で育った。
それでも…
前世日本人の私にとっての魔法は魅力的で
いろんな魔法を見るたびわくわくドキドキして
目を輝かせてしまう。この気持ちは抑えられない。
それに、
産まれた時から身体の中に魔力は存在するが
魔法が使用できない様に10歳までは封印される。
(使い方次第で死を招く危険なものだからだ。)
家庭教師や学園でしっかり基礎を学び、
感情のコントロールができる様になるまで
おあずけ状態なのだ!
6歳のティアナが魔法が使えるまで後4年!
それまで我慢するなんてできない!
自分が使えないなら他人の魔法を見るしかない!
「…私、魔法が好きなの!」
私はアレンの瞳を真剣に見つめる。
「だから
いろんな魔法をたくさん見たいし
たくさん知りたい!」
素直な気持ちをぶつけた。
アレンはもう何も言わなかった。
アレンが呪文のようなものを唱え
スカートにあるシミに手を添えると
添えた右手からパァッとが光が広がった。
眩しくて思わず瞬きをしている間に
右手から放たれる光は、
雲の間から差し込む太陽のように
スカートを優しく照らし始めた。
光の中を飛び交う白いきらめきが
オレンジのシミに降り注ぐ。
光に触れたオレンジの液体は
手に吸い込まれていくように宙に舞い
やがて大きな一塊になった。
いつのまにか左手に持っていたグラスを
浮かんだ液体の下に添えると
液体はコップの中に落ちていく。
液体を落とし終えると光はふっと消えた。
魔法を見てすごいなと思ったことは多々あるが
綺麗だと思ったのは初めてだった。
「わぁ~!」
私は目を輝かせて
興奮気味にアレンが持つコップに手を伸ばした。
「見せて!」
半ば奪い取る勢いでコップを受け取り
中に入った液体を揺らし匂いを嗅いでみた。
・・柑橘系の匂いがする。
こくっ
気になる衝動を抑えきれず思わず飲んでしまった。
・・思った通り、オレンジジュースの味がした。
「ク、クロウド公爵令嬢っ!!」
目を見開き驚いたようにアレンが
両手で持っていたコップを奪った。
少し恥ずかしくなって
ごまかすようにアレンに笑いかけた。
「綺麗だったからつい・・」
驚きに少し固まった後、
おそるおそるといった感じでアレンに尋ねられた。
「クロウド様は
笑わないのですか?」
「?」
言葉の意味が分からず首を傾げる。
「私は、あまり魔法が得意ではありません」
アレンが目を塞ぎがちに話す。
「今の魔法は下級魔法の一種です。
一般的にクリーニング魔法は
スカートに手を添えると
シミは光り空気に蒸発して消えます。」
サラマン家は代々騎士を輩出する侯爵位の貴族だ。
騎士家系では物心つくころから剣の練習に明け暮れ、
強さこそ正義だと毎日毎日鍛えられる。
剣術を鍛えて鍛えて鍛えて、
10歳になると更なる強さを求めて魔法を学ぶ。
火が使えれば炎を纏う剣になるし
風が扱えれば素早さを上げられるのだ。
私のお父様は実力主義者で
魔法が使えるかどうかなんて気にしない。
それでも、魔法が使えるかどうかは勝敗に大きな差をつける。
どれだけ剣術が優れていても純粋な剣術だけでは
魔法剣術には勝てないのだ。
現に、「上級騎士」以上の序列が存在しないことが
それを物語っている。
「サラマン侯爵も
水の使い手だったよね?」
サラマン侯爵も王国騎士団の一員だ。
「はい。父は上級魔法であり
氷を扱うのに長けています。
しかし・・
私には魔法の才能がありませんでした。」
肩をすくめ悲しそうに笑った。
魔力の強さや魔法のセンスは
王国騎士団にとって大変重宝される。
その反面、
魔力が低かったり使えなかったりする人は
見下され憐みの対象となるのだ。
「綺麗だった。」
私は素直な感想を告げた
「綺麗で・・優しかった。」
アレンはキョトンとした顔をしている
「魔力が高い人はたしかに強い。
でもそれは、"闘う上で"の話。
お父様が言ってたの。
魔法を見れば
その人の"本質"が見える。」
アレンの瞳をまっすぐ見上げた
「あなたの魔法は綺麗で優しい。
きっと、
"守るため"に正しい力を使える人。」
・・私は確信している。
「あなたは強くなる。」
あなたの未来を知っているから。