悪役令嬢のはずなのに!?〜いつのまにか溺愛ルートに入ってたみたいです〜
幼少期編:9歳

大人びた婚約者

ティアナは9歳になっていた。

ギルとキースは7歳になり
2ヶ月前にライトロード学院に入学した。

シリウスとの婚約が決まり
王妃教育を初めて1年以上が過ぎた。

王妃教育は、
その道のプロというプロの方が
講師に来てくれたり
王妃様自身が教えてくれたりと
淑女教育とは比べものにならないくらい
厳しくて厳しくて厳しくて
その分、すごくためになる内容だった。
前世大人の私でも涙が出るくらい。

その甲斐あってか
身についたことはすごく多い。
教育の一環として
美容を極める時間もあったりする。

自分で言うのもなんだけど
絶賛、"良い女"に成長中!

このまま成長すれば、
"可愛さ"ではヒロインに劣るけど
"美人さ"は誰にも負けないと思う。

それに、確定している未来がある。
私はなんと巨乳になる!
(前世寄せ上げBの私にには一番嬉しい事実)




今日も王妃教育の日。

馬車を降りると正装したシリウスが待っていた。
白のスーツに青のカフス、チーフ。
私は薄い黄色のドレスに白色のレース、
胸に飾るのは琥珀色の宝石。
なんかお互いの瞳の色に寄せたみたいで恥ずかしい。
・・いや、たぶん仕組まれてる。恥!

私はカーテシーをして挨拶する。

「ティア、今日も綺麗だ。」
最近、シリウスはティアナを愛称で呼ぶようになり
平気で歯がゆいセリフをはくようになった。

(考えない、何も聞こえない・・)

私は平静を保って挨拶を交わし
シリウスの手を取るとガーデンへと案内された。


ガーデンパーティーが開かれた庭に
テーブルとベンチが用意され
そこにシリウスと腰をかけた。

王妃教育の日は、
お城に到着するとまずシリウスとお茶をする。
小一時間くらい話したところで
王妃様が現れて授業が始まる。
シリウスとのお茶も王妃教育の一環で
毎回同じパターンを辿っている。

・・ただ、
何回お茶してもこのあまーい雰囲気には慣れない。

普段は幼なじみとしてキャッキャ遊んでるのに
この時ばかりはお互いによそ行き顔で
歯がゆいセリフをはいて恋人の様に振る舞う。

お互いに上司を連れた取引先で
友達とお茶するような
なんかものすごーく恥ずかしい感覚。

膝に手を置いて俯いていると、
シリウスが右手で私の左手を握り指を絡めてきた。
そのまま恋人繋ぎをされ、
私は固まった。

シリウスとは
手を繋いで草原をかけたことがある。

子供だし意識なんてしたことなかったけど・・

甘い雰囲気で恋人繋ぎされると
歳相応の少女になったみたいで顔が熱くなる。

真っ赤な顔をして固まる私を見つめて
シリウスがふっと笑った。

「意識してくれているの?」
恥ずかしくて
どうにかごまかせないかと
シリウスをじろっと睨んだ。

「ふっ」と笑って
シリウスは手を離してくれた。

いつものように会話が始まる。


会話は尽きることがない。

シリウスとレオンはすごい。
子供らしく草原をかけまわったりするのに
会話の根本にあるのはこの国の事で。
こんな子供のうちから常に未来を見据え
自分の立場を理解し役割を果たそうとする。

そんな二人と話すうちに私も考えるようになった。

公爵令嬢として産まれたからには
安定した不自由のない生活のお返しに
この国の人達に貢献する義務がある。

この気持ちはクロウド家の人間や
お父様と過ごすうちに芽生えた
ティアナでも前世の私でもない今の"私の気持ち"だ。

魔法が使えなくても、
この国よりはるかに発展していた前世の世界。
私には前世の記憶しかないが
きっと何かの役に立つ事があるんじゃないかと模索する。



「そろそろだね。」
シリウスが席を立ちながら
時間の終わりを告げてくれた。

席を立ちお見送りしようとすると
ふいにシリウスが左手をとった

「・・・?」
いつもなら挨拶を交わして別れるんだけど・・

そんな困惑した私を他所に
シリウスは左手を顔に近づけ

「ちゅっ」
手の甲にキスをおとした

(あ、新しいやつキターー!)

真っ赤になる私に
ふっと微笑み

「またね。」
シリウスはその場を後にした
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