激情を秘めた警察官はウブな令嬢を娶り溶かす~1年で婚約破棄するはずが、敏腕SPの溺愛が止まりません~
これからどうぞよろしく

「百年にひとりの天使」だなんて、大袈裟な表現をするものだ。

初めてそのコメントを目にした時、恥ずかしいからやめてほしいと思った。
わたしは芸能人でもなんでもない。ただの女子大生だ。

事の発端は、経済雑誌に掲載されたとある記事だ。フラワー業界で国内シェアナンバーワンを誇る天笠花壇の社長である父、天笠誠(あまがさまこと)とその娘、天笠詩乃(あまがさしの)……わたしとの対談だった。

市場規模が年々縮小されているフラワー業界で、冠婚葬祭の花からポプリを使用した小さな雑貨まで幅広く事業を展開し、花のことなら天笠、と言われるほど名を売っている。

それを一代で築き上げた父は娘から見ても尊敬できるが、娘との対談なんて、経済誌を読むような読者からしたらつまらないのではないか。

売り上げナンバーワンのフラワーアレンジメントでもなく、契約先の生産農家でもなく、わたしは経営のことはわからない。店舗のことだって催事や季節のイベント時に手伝うだけだ。

あまり乗り気ではなかったが、どうしても一緒にインタビューをと猛プッシュする雑誌社の熱意に負け、雑誌のすみにこそっと載るだけなら良いかと軽い気持ちで引き受けた。

それは大学三年の秋だった。

しかし、控え目になどという認識は間違いだった。たくさんの花に囲まれ、会話をする親子の写真はカラー見開きという扱いに。

しかも、なぜか全く関係ないはずのわたしの写真が表紙にアップで採用された。経済雑誌など、普段は難しい本を読まない人たちも手に取るという現象がおこる。女優のグラビア写真集のごとく飛ぶように売れて、驚異の発行部数をたたき出したと言うから驚きだ。

美女、天使だとSNSが盛り上がると、次はワイドショーが取り上げる。そしてさらに本が売れた。おかげでわたしは時の人だ。なにが起こっているのか、あっという間に有名人になってしまった。

自分の写真がインターネット上で広まれば広まるほど、賞賛する言葉だけではなく、卑猥な言葉や妬みが聞こえてくるようになった。
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