激情を秘めた警察官はウブな令嬢を娶り溶かす~1年で婚約破棄するはずが、敏腕SPの溺愛が止まりません~
これは経験値の差か。戸惑っているわたしの方が意識しすぎだと言わんばかりに、慧さんはスマートに恋人を演じている。

(うう、ドキドキする……)

契約を結んでから改めて彼をマジマジと見たのだが、とにかく顔が良すぎる。切れ長の瞳に高い鼻は好みだったりする。
胸を押さえて深呼吸をすると、慧さんが心配そうに顔を覗いてきた。

「怖い? 俺がいるから大丈夫だよ」

恋人モードは破壊力抜群だ。
心臓を撃ち抜かれる。
すれ違いざまにそのセリフを聞いてしまった女性が顔を赤くしていた。

ですよね。わかります。
強面なのに、口調はとことん甘いのだから。

「何が起ころうと詩乃のことは守るから」

「うん……」

なんて罪作りな男なのだろう。過去に何人もの女性を泣かしたに違いない。

「ちょっと顔が疲れてるな」

「昨夜、あまり寝れなかったの。ちょっと緊張しちゃって」

ストーカーももちろんだが、大人の男の人と出かけるだけではなく、相手はハイスペックな慧さんなのだ。いろんなことを気にしてしまって、気づけば朝方だった。

「無理せずに早めに帰ろうか」

「不安だったけど、今はわりと平気。引き籠もってばかりで光合成できてなかったし、久しぶりに街に出たらちょっと気分がいいよ。慧さんがいてくれるおかげだと思う。ありがとう」

感謝を伝えると、なぜか慧さんは噴き出した。

「なんで笑うの?」

「光合成! そこは日光浴と言えばいいのに詩乃も花みたいだな」

「あ……」

「さすが天笠花壇の娘」

わたしは頬をふくらませた。

「ばかにしてる?」

「かわいいなと思ってるよ」

とんだプレイボーイなセリフだ。
初めて会ったときの武骨な感じははどこへ行ったのか。
< 10 / 67 >

この作品をシェア

pagetop