激情を秘めた警察官はウブな令嬢を娶り溶かす~1年で婚約破棄するはずが、敏腕SPの溺愛が止まりません~
とりあえずここまで、トラブルもなく人目も気にならなかったことに安堵する。
人目が気になっていたが、芸能人のように帽子で顔を隠して、自意識過剰だったかもしれない。

「つけてくる奴がいないかと電車を試したが、特段怪しい奴は見つからなかったな。平日の昼間だし、普段は普通に働いているのかもしれない」

「あ、何か試していたの?」

リムジンでお迎えだったらどうしようと構えていたら、電車に徒歩だったのも予想外だった。

「まあ、とりあえずな。
しばらくの目的は、俺の存在をストーカーに知らせることだから。それなら電車のほうが周囲にアピールしやすいって理由で車はやめてみたんだ。
手荒な方法だけど、犯人をあぶりだして解決を早めるには多少の刺激も必要だから。チラホラと視線はあったが怪しいものはなかった。次は時間を変えて夜に出かけてみよう」

「うん……」

さらっと次の約束が取り付けられる。
夜のデートってどんなだろう。夕食を食べるくらいしか思いつかない。

「それで、ちょっとお願いしておきたいことがあるんだが……」

「はい」

何だろうと背筋を伸ばす。

「君の服装についてだ。ヒールのある靴とスカートは逃げにくくて危険度が増すんだ。次回からなるべく動きやすいものにしてほしい」

ヒラヒラとしたワンピースに、ヒール五センチのショートブーツ。なんの危機感もない格好の自分を見下ろして、羞恥で顔を熱くした。

「ご、ごめんなさい。やだ。わたしったら」

慧さんに感心している場合じゃない。自分だって考えなくちゃいけなかったんだ。

「いや、別に悪くない。ただ、僅かなリスクでも回避できるように工夫をしようってことなんだ」
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