激情を秘めた警察官はウブな令嬢を娶り溶かす~1年で婚約破棄するはずが、敏腕SPの溺愛が止まりません~
甘えてほしいんだ
慧さんは宣言通り、次は夜のデートにわたしを誘った。

お父さんに遅くならずに帰ると伝えると、一泊くらいしてこいと言う始末だ。普通は心配して早く帰れというものではないのか。
わたしたちの距離が徐々に縮まっていることを喜んでいるようだ。

夜の外出は、いくら彼が警護のプロとして付き添ってくれるとはいえ、乗り気になれなかった。
暗がりが多くて怖い。誰かが隠れてるかもしれないと不安になる。
出発前から気持ちが落ち着かなかった。
それでも、誘ってくれたことも嬉しかったし、このまま何も出来なくなりそうな自分も嫌だった。

勇気を振り絞って出かけることにする。

今日は、以前言われたとおりにパンツスタイルにした。
ズボンにスニーカーだと、背が低いので幼く見えてしまうのがコンプレックスだ。
大人びて見えるように、トップはブラウスにジャケットを羽織った。何度も鏡の前で確認したが、彼の目にはどう映っているだろう。

慧さんは家まで車で迎えに来てくれ、わたしは助手席に乗り込んだ。

「うわ、寝ちゃいそうなくらい気持ちいい。こんな素敵な車、初めて」

革張りのシートにお尻が沈む。座り心地が良すぎて緊張した。

「天笠さんのおじさんは車に興味ないの?」

「お父さん、休日も配達で使うトラックばかり乗るの。家族旅行以外は普通車に乗らないかな」

取締役なのだから、現場にはいかなくてもいいと周囲から再三言われているのに、やはり会議室より現場が好きらしい。

「ははは、仕事熱心な天笠さんらしい」

「今日はどこへ行くの?」

もう日が暮れている。また不動産めぐりという時間ではない。

「買い物をして、それから夕飯を食べよう。レストランを予約してあるんだ。知り合いの店だからゆっくりできる」

「買い物ですか……?」

気分が落ちる。

「この間、最近はずっと外出できていなかったから、ショッピングをしたいと言っていただろ。デパートに行こう」

デパートと聞いて、ごくりと喉を鳴らした。
嫌な記憶がフラッシュバックする。

以前、理央と出かけた時の話だ。

買い物中にわたしが「これかわいい」「欲しい」と発言した商品すべてが、後日自宅に届けられるということがあった。

その前から、応援のメッセージとともにプレゼントを送ってくれるファンもいたため、その時は不思議なことがあるものだと首をかしげながらも受け取ったのだが、実はそれはストーカーからの贈りものだった。
証拠があるわけではないが、買い物中に、ずっと後を付けられていたのだと思う。

そしてそれは、プレゼントのひとつのぬいぐるみに、カメラが仕込まれていることが発覚し、やっとそこで気がついたことでもある。

幸い、部屋の隅に置いていたから生活を撮られることは殆どなかったが、ベッドにでも置いていたら大変なことになっていた。
着替えや寝ている姿など、すべてを撮影されていたかもしれない。

思いだすだけでもぞっとする。
その時の恐怖が拭えないでいる。
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