激情を秘めた警察官はウブな令嬢を娶り溶かす~1年で婚約破棄するはずが、敏腕SPの溺愛が止まりません~
「シェフ兼オーナーの桐生(きりゅう)です。今夜はふたりの特別な日に、当店をお選びいただきありがとうございます」

(特別な日?)

どういうことだろう。
わたしの誕生日ではない、ということは慧さんの誕生日?!
誕生日の人にデパートでもお金をだしてもらい、さらには食事まで準備してもらったのか。

「え、慧さんお誕生日だったの……?! わたしったらなんの準備も……」

慌てると、慧さんが頭をかかえた。

「おい海吏(かいり)。詩乃に変なこと吹き込まないでくれ。詩乃、違うよ。誕生日じゃないから」

海吏と呼ばれた桐生さんは、わたしたちを眺めて面白がる。

「だよね。俺の店を使うんだから誕生日じゃなくて、もっと大切な、一世一代の告白するんだよね」

「違う!」

唸った慧さんに桐生さんはきょとんとする。

「違うの? 店まで貸切るから何事かと思っていたのに。しかもこんな可愛らしい子を連れてきて」

「やっぱり、また貸し切りにしていたの?」

わたしが反応すると、慧さんは桐生さんを睨んだ。

「余計なことを言うなと言っているだろう。今日はただの食事だ」

「だって慧が突然、こんなにかわいい女の子を連れてくるなんて思わないから。こんばんは。
桐生海吏です。ええと、どこかで会ったことあります? 見覚えが……どこだったかな。以前にも店を利用してくれたことある?」

桐生さんは首をかしげながら顔を覗いてきた。
桐生さんとは初めて会う。見覚えがあると感じるなら、雑誌の写真を見たのではないか。

「あの、たぶん初めまして、です。天笠詩乃です。よろしくお願いします」

婚約者ですと言って良いのかわからなくて、名前を名乗るだけにする。
わたしたちの関係は期間限定だし、あまり多方面に言いふらさない方がいいよね。

「ご関係をお伺いしても?」

桐生さんの質問にどう答えようか言い淀んだ。
救いを求めて、ちらっと慧さんを見る。
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