激情を秘めた警察官はウブな令嬢を娶り溶かす~1年で婚約破棄するはずが、敏腕SPの溺愛が止まりません~
前菜と飲み物が届いて、軽く乾杯をしてアルコールを口に含む。
スパークリングワインがシュワシュワと喉で弾けた。

騒動が起こってから、ゆっくりとお酒を楽しむこともできなかった。
久しぶりのアルコールに、ほぅっとため息が漏れる。

買い物に食事に。
日常はこんなだったなと思い出す。
慧さんのおかげで、少しずつ元の生活を取り戻せている気がした。

慧さんは運転を控えているので、お水で乾杯だ。
自分だけ飲んでいるのが申し訳ない。
今度は自宅に誘ったら、慧さんも一緒に飲める。お父さんたちも一緒に……そこまで考えて、いやいやと思い直す。

だから、婚約者のふりなんだってば。
自宅で飲もうだなんて、そんな誘いは迷惑になる。このデートもすべて偽物。
勘違いしちゃだめだ。

「海吏がごめんな」

「どうして?」

「普段からちょっと口がすぎる奴なんだけど、今日は特に失礼で……嫌な思いしなかった?」

慧さんは前菜を口に運びながら、苦い顔をする。

「ぜんぜん。そんなことない」

「それならいいけど。悪い奴じゃないんだ。学生の頃から一番仲良くしてて、あいつなら信頼できる。詩乃を合わせておいたら、何かの時に力になってくれると思ったんだ」

また慧さんは色々考えてくれてる。
本当に、何から何まで完璧で、たくさん尽くしてくれる。

「うん。ありがとう。慧さんのお友達に会えてうれしい。こんな素敵なレストランで食事させてもらえて、夢みたい。それにまた貸し切りだなんて……贅沢させてもらっちゃって」

「贅沢なんかじゃないよ。せっかくのデートなんだ。詩乃には心穏やかに過ごしてもらいたいんだよ」

恋人を作るつもりがないと聞いてから、ずっと胸がしくしくとしている。
それを悟られないように微笑んだ。
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