激情を秘めた警察官はウブな令嬢を娶り溶かす~1年で婚約破棄するはずが、敏腕SPの溺愛が止まりません~
自宅の玄関先まで慧さんに送ってもらうと、お父さんとお母さんが飛び出してきた。
「詩乃!」
ふたりは同時にわたしを抱きしめる。
「慧君から連絡をもらってびっくりしたよ……」
「申し訳ありません。僕が付いていながらこんなことになってしまい」
「何を言っているんだ。慧君がいたから何事もなく済んだんだ」
お店では桐生さんが。
お父さんも慧さんもみんなが謝っていて、自責の念にかられる。
(わたしが、浅はかだったからだ……)
警察につかまった知らない男は、カバンにわたしの写真をたくさん持っていた。
いつどこで撮られたのかわからないものばかりだ。男に腕をつかまれた時のことを思い出すと、また手が震えだした。治まったはずなのに。
「じゃあ、また連絡するから、今日はもうゆっくりするんだよ」
慧さんが帰ろうとする。
「あ……」
ずっと寄り添ってくれていた体が離れると、肌寒く感じた。
隙間が、とても寂しい。慌てて服を掴む。
気づいた慧さんは眉を垂らした。
「家に付いたら電話をするよ」
「――――うん……」
やだな。引き留めて、いったいどうしたいのだろう。
はしたなく掴んでしまった袖を、ゆっくりと離す。
でも、離したくないって思っていた。
「慧君。もう遅いから泊まっていきなさい」
突然降ってきたお父さんの声に、顔を跳ね上げる。
「え?」
「ええそうね。客間もあるし、詩乃も寂しそうだしぜひ」
お母さんも賛同して、慧さんとふたり言葉を失う。
「あ、いや、しかし……」
めずらしく慧さんが動揺している。
「お父さん、慧さんはあした仕事だし困っているから……」
慌ててなんとかしようとするが、わたしにはなんの力もなかった。
「いえ、ご迷惑をおかけするのは申し訳ないので」
「不安がる娘をひとりにして、帰ろうっていうのかい?」
慧さんは丁重に断ろうとしたが、お父さんはなんとも爽やかに、警視庁凄腕のSPを脅した。