激情を秘めた警察官はウブな令嬢を娶り溶かす~1年で婚約破棄するはずが、敏腕SPの溺愛が止まりません~
お父さんは来客中のはずだ。
高校時代からの友人で、梧桐(あおぎり)さんという方だ。
頻繁に遊びにくるので、遭遇するたびに挨拶を交わしているが、細くて色白で、線の細いお父さんとは対照的な見た目だ。
梧桐のおじさんは、ほりが深く厳つい顔に、高身長でがっつりとした体つき。
一見、ちょっと怖そうな人。
ふたりが並んでいるとちぐはぐで、どうして仲が良いのか不思議なほどだけど、長く親友を続けている。

梧桐のおじさんはまだ帰っていないはずなので、挨拶を求められるのだと思い、急いで身支度を調えて向かった。


応接室のドアをノックすると、お父さんから返事があった。

「失礼します」

よそ行きの声をだして部屋へと入る。
視線で部屋をぐるりと見回すと、来客用のカウチにおじさんともうひとり男の人がいた。
お父さんたちより若い。黒髪にスーツ。仕事関係の人だろうか。

「詩乃さん、久しぶりだね」

おじさんが軽く手をあげた。

「こんにちは。ご無沙汰してます」

挨拶を返すと、となりの男の人もこちらを向いた。目がぎろっとしていて、第一印象はちょっと怖い。

「あの、こんにちは。初めまして。娘の詩乃と申します」

誰だろうと思いながらも頭をさげる。

「こいつはわたしの息子なんだ。ほら(けい)、目つきが悪いぞ。愛想よくしろ」

「えっ」

息子と紹介された彼は立ち上がって頭を軽く下げた。

「こんにちは、梧桐慧(あおぎりけい)です」

彼は背が高かった。じっと見下ろされ、たじたじとする。
座るように促されて、四人でテーブルを挟み向かい合う。これはどういう場なのだろう。
慧さんはわたしの正面に腰を下ろした。お手伝いさんが新しい紅茶を持ってきてくれた。

「詩乃、慧君は警視庁でSPをしているんだよ」

熱い紅茶をすすりながら、なぜかお父さんが誇らしげに話す。

「SP?」

慧さんは肩幅が広い。
スーツの上からでも、硬い胸板が想像できるほど筋肉質なのがわかる。びしっと伸びた背筋に、襟足が短く清潔感のある横わけのスタイル。
実にそれらしくて納得する。
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