激情を秘めた警察官はウブな令嬢を娶り溶かす~1年で婚約破棄するはずが、敏腕SPの溺愛が止まりません~
俺が夢中なんだよ
五つ星ホテルの会場で開催されるパーティーは想像以上に華やかで、わたしは圧倒されていた。


「まぁ、天笠花壇のお嬢さんなの」

慧さんに話しかけてきた女性は、わたしを値踏みした。
口調は柔らかく見せているが、目が笑っていない。ジロリと睨まれて、とにかく低姿勢に徹する。
豊満な胸、くびれたウエスト。香水の匂いに酔いそうだ。
自分のスタイルと比べてしまい落ち込む。

「ええ、どうしても同伴をと、彼女には無理矢理着いてきてもらったんですよ」

慧さんがわたしの肩を抱いた。それだけでとても心強い。

「なかなか靡いてくれなくて、いま必死に口説いているところなんです」

パーティーが始まってから、マウントをとられるのは初めてではない。

そして慧さんは彼女たちの思惑を知ってか知らずか、話しかけてくる人たちに対して、自分が惚れているという設定を貫いた。

慧さんに思いを寄せるからこそわかるのだが、向けられるのは嫉妬だった。
彼を狙う女性の多さに驚く。

改めて梧桐の家柄や立場を思い知らされた。

(佇まいも素敵だもんな……)

こんなにたくさんの人達がいるなかでも、特別輝いて見える。
それに引き換えわたしは……。
大人の女性たちに交じると、子供すぎる自分に自信がなくなる。


わたしが睨まれる度に、慧さんは守ってくれた。
悔しそうにする女性に会釈をして別れると、慧さんはネクタイを少しだけ緩めた。

「はぁ、普段はネクタイをしないから、息苦しく感じる。詩乃は疲れていない? だれもかれも、詩乃ばかりに興味があるみたいで……」

「こんな華やかな場所にわたしのような子供が紛れていたら、それは目立つよ」

慧さんの隣に立つのがわたしでは、反感を買うのも無理はない。
会場中の視線が突き刺さるようだ。
すると慧さんは悩ましげな溜め息をついた。

「詩乃は本当に自分をわかっていないな」

「え?」

どういう意味だろう。
やっぱりこの場で浮いてるのかも。慧さんの評価を下げないように、しゃんとしてなくっちゃ。

「慧、詩乃さん」

気合いを入れ直したところで声をかけられた。
振り向くと、タイトな黒いドレスに身を包んだマダムがこちらに歩いてくる。

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