激情を秘めた警察官はウブな令嬢を娶り溶かす~1年で婚約破棄するはずが、敏腕SPの溺愛が止まりません~
そういえば昔、梧桐のおじさんも警察関係者だと聞いた記憶があった。

「梧桐のおじ様もSPでいらっしゃるんですか?」

「ははは! わたしはSPは努めたことがないな」

梧桐のおじさんが軽快に笑うと、なぜかお父さんが得意げに言った。

「詩乃、梧桐は警視総監だぞ」

「え?!」

警視総監って、すごいかたなんじゃ……。

「話したことなかったか?」

ない。
焦るわたしに、お父さんはのほほんとしていた。
そんな地位のある人なら、ちゃんと伝えておいてほしい。

「すみません、知らずに失礼を……」

「いや、普通は知らないよ。わたしはこんながたいをしているが、慧のように運動神経はよくなくてね。事務方の勤務が多かったんだ。SPなんて出張も多いし、危険がつきものだからやめろと言っているのに。なかなか頑固な息子で手を焼いているんだけどね」

「警視庁トップの父さんがそれを言いますかね。俺は事件を追うより、目の前にいる人を守りたいんだと、何度も言っているでしょう」

「市民の安全は勿論さ。しかし自分の子供の事となると、二枚舌になるものだよ。危ないことはしないでほしいと思うのはどの親だって一緒さ。お前も家庭を持てばわかる。日々の働きっぷりは、上司としては誇らしいばかりだけどね」

慧さんは痛いところをつかれたようで、閉口した。

「素敵な考え方です。体を鍛えなくちゃだし、神経も使いますでしょう? 大変なお仕事なのに信念をもって続けてらっしゃるのはすごいですね。わたしは犬に吠えられただけでびくっとしちゃうので、尊敬します」

なんとなく、お父さんの会社で働けたらいいなと思っているわたしとは雲泥の差だ。
もちろん花に関わる仕事は好きではあるが、大きな信念があるわけではない。

凛々しさに感心して素直に賛辞を述べると、慧さんは恥ずかしげにした。

「べつに……人には得手不得手があるから……俺は逆に、花なんて繊細なものは扱えないですよ」

頬が少し赤い。
最初の印象と違う照れた仕草に、親しみを感じた。
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