激情を秘めた警察官はウブな令嬢を娶り溶かす~1年で婚約破棄するはずが、敏腕SPの溺愛が止まりません~
「……慧さんが優しいのは知ってるけど、こんなにもおんぶに抱っこで申し訳ないの。あの、何かお詫びというかお礼というか……わたしも何か返したいんだけど……何かできることないかな?」
自分でできることなら、なんでもしたい。
恩返しをしたいってずっと思っていた。
「お礼?」
「そう! なんでもするから。そうだな欲しいものはない? あまり高いものは買えないけど……あ、旅行はどうかな? ペーパードライバーだからあまり遠出も難しいんだけど……わたし、連れて行くよ」
必死に訴えると慧さんは噴き出した。
「詩乃が俺を旅行に連れて行ってくれるの? 君の運転で?」
「え、ええ。怖いかな」
「はは、怖くないよ。それはうれしいな。けど、お礼だなんて気にしないで。婚約者として当然のことをしているだけだよ」
それは義務だからというふうに聞こえて、ちくりと胸が痛んだ。
「それでも……感謝しているの。そうだ! 疲れているなら、マッサージしよっか。わたしいつもお父さんにお願いされて、うまいんだよ。肥料や鉢植えを抱えることが多いから、こうみえて力持ちなの」
袖を捲って力こぶをみせると、慧さんはお腹を抱えた。
「あははは」
「あ、ひどい。そりゃあ、慧さんのように鍛えてるわけじゃないけど」
「ごめん。かわいくてつい」
いつまでも笑うのでパンチで抗議する。
慧さんはなんの攻撃にもならない柔らかいパンチを受け止めると、そのまま手を握った。
「それほど言うなら、お願いを聞いてもらおうかな。なんでも聞くと言ったね」
慧さんは意味深に言う。
「も、もちろん」
「今日一日……いや、一泊だな。明日までここで過ごそうか。どこにも行かず、ずっとふたりきりだ」
「――――へ?」
ここで? この部屋で、明日まで、ふたりきり?
「――――や、それは……っ」
「俺ともう一泊してくれるね。詩乃はいい子だから、やっぱり駄目だとか他のものにしてほしいだなんて言わないよね」
わたしは口をパクパクとする。反論をする前にねじ伏せられた。
慧さんの言い分は、ふたりの初めての外泊が嫌な思い出になってしまうのは寂しいというものだった。
付き合っているフリなんだから、思い出も何もないと思うのだが、そんな風に言われたら、わたしだって首を縦にふらざるを得なくなる。
「どこにも行かず、ここにふたりで閉じ籠っていれば安全だ。今だけは嫌なことは忘れて。たくさん甘やかしてあげるから」
慧さんのお願いを聞くという話なのに、どうもわたしが贅沢をしていないだろうか。
まずはシャワーをと勧められ、泡風呂とジャグジーでゆったりと疲れをほぐした。
わたしがゆっくりしている間に、ふたりの新しい服が届けられていた。抜かりない。
慧さんもシャワーを終えると、朝からフルコースのフランス料理を楽しんだ。
有名シェフが特別に腕を揮ってくれ、メニューにないデザートまであって舌鼓をうつ。
昨夜からおなかが空いていたのもあって、ペロリと平らげる。
量を少なめにしてくれていたとはいえ、昨日の今日で現金な自分にびっくりした。
「ああ美味しかった。デザートのりんごのタルトが特に。ティラミスみたいなチーズクリーム入っていたよね。シナモンとの相性が最高だった」
「気に入ったのなら、持ち帰り用で作ってもらおう」
「えっ」
驚いている間に慧さんは、さっと電話をして注文してしまう。
「帰るときにフロントで渡してくれるって。家族におみやげにするといい」
「もう、甘やかしすぎだよ……でもありがと。すごく美味しいから、お父さんとお母さんにも食べてもらいたいなって思ってたの」
よしよしと頭をちょっと乱暴に撫でられて、ペットになった気分だ。
ボードゲームで遊んで、次にスクリーンで映画を見ることになった。
「わたし、大きなベッドの上でポップコーン食べながら映画を見るの夢だったんだ」
「なんだそれ」
「だって、ものすごく贅沢じゃない? 行儀が悪いことって普段なら簡単にできないことだもん」
「確かに。じゃあ、とことん贅沢をしようか。ついでにベッドでお酒も飲もう」
キッチンとバーカウンターもあったので、慧さんがカクテルを作ってくれた。
「慧さんってほんと何者なの? 昼間はSPで、夜はバーテンダー?」
シェイカーを手際よく振る。
「知り合いのバーテンダーに教わったことがあるだけだよ。今日の詩乃は面白いな」
ふたりでたくさん笑った。
自分でできることなら、なんでもしたい。
恩返しをしたいってずっと思っていた。
「お礼?」
「そう! なんでもするから。そうだな欲しいものはない? あまり高いものは買えないけど……あ、旅行はどうかな? ペーパードライバーだからあまり遠出も難しいんだけど……わたし、連れて行くよ」
必死に訴えると慧さんは噴き出した。
「詩乃が俺を旅行に連れて行ってくれるの? 君の運転で?」
「え、ええ。怖いかな」
「はは、怖くないよ。それはうれしいな。けど、お礼だなんて気にしないで。婚約者として当然のことをしているだけだよ」
それは義務だからというふうに聞こえて、ちくりと胸が痛んだ。
「それでも……感謝しているの。そうだ! 疲れているなら、マッサージしよっか。わたしいつもお父さんにお願いされて、うまいんだよ。肥料や鉢植えを抱えることが多いから、こうみえて力持ちなの」
袖を捲って力こぶをみせると、慧さんはお腹を抱えた。
「あははは」
「あ、ひどい。そりゃあ、慧さんのように鍛えてるわけじゃないけど」
「ごめん。かわいくてつい」
いつまでも笑うのでパンチで抗議する。
慧さんはなんの攻撃にもならない柔らかいパンチを受け止めると、そのまま手を握った。
「それほど言うなら、お願いを聞いてもらおうかな。なんでも聞くと言ったね」
慧さんは意味深に言う。
「も、もちろん」
「今日一日……いや、一泊だな。明日までここで過ごそうか。どこにも行かず、ずっとふたりきりだ」
「――――へ?」
ここで? この部屋で、明日まで、ふたりきり?
「――――や、それは……っ」
「俺ともう一泊してくれるね。詩乃はいい子だから、やっぱり駄目だとか他のものにしてほしいだなんて言わないよね」
わたしは口をパクパクとする。反論をする前にねじ伏せられた。
慧さんの言い分は、ふたりの初めての外泊が嫌な思い出になってしまうのは寂しいというものだった。
付き合っているフリなんだから、思い出も何もないと思うのだが、そんな風に言われたら、わたしだって首を縦にふらざるを得なくなる。
「どこにも行かず、ここにふたりで閉じ籠っていれば安全だ。今だけは嫌なことは忘れて。たくさん甘やかしてあげるから」
慧さんのお願いを聞くという話なのに、どうもわたしが贅沢をしていないだろうか。
まずはシャワーをと勧められ、泡風呂とジャグジーでゆったりと疲れをほぐした。
わたしがゆっくりしている間に、ふたりの新しい服が届けられていた。抜かりない。
慧さんもシャワーを終えると、朝からフルコースのフランス料理を楽しんだ。
有名シェフが特別に腕を揮ってくれ、メニューにないデザートまであって舌鼓をうつ。
昨夜からおなかが空いていたのもあって、ペロリと平らげる。
量を少なめにしてくれていたとはいえ、昨日の今日で現金な自分にびっくりした。
「ああ美味しかった。デザートのりんごのタルトが特に。ティラミスみたいなチーズクリーム入っていたよね。シナモンとの相性が最高だった」
「気に入ったのなら、持ち帰り用で作ってもらおう」
「えっ」
驚いている間に慧さんは、さっと電話をして注文してしまう。
「帰るときにフロントで渡してくれるって。家族におみやげにするといい」
「もう、甘やかしすぎだよ……でもありがと。すごく美味しいから、お父さんとお母さんにも食べてもらいたいなって思ってたの」
よしよしと頭をちょっと乱暴に撫でられて、ペットになった気分だ。
ボードゲームで遊んで、次にスクリーンで映画を見ることになった。
「わたし、大きなベッドの上でポップコーン食べながら映画を見るの夢だったんだ」
「なんだそれ」
「だって、ものすごく贅沢じゃない? 行儀が悪いことって普段なら簡単にできないことだもん」
「確かに。じゃあ、とことん贅沢をしようか。ついでにベッドでお酒も飲もう」
キッチンとバーカウンターもあったので、慧さんがカクテルを作ってくれた。
「慧さんってほんと何者なの? 昼間はSPで、夜はバーテンダー?」
シェイカーを手際よく振る。
「知り合いのバーテンダーに教わったことがあるだけだよ。今日の詩乃は面白いな」
ふたりでたくさん笑った。