激情を秘めた警察官はウブな令嬢を娶り溶かす~1年で婚約破棄するはずが、敏腕SPの溺愛が止まりません~
「だって、わたしたちは期間限定の婚約者なんだよ。慧さんは他の女の人と結婚するじゃない。わたしばかり本気になっちゃって、ずるいよ……愛などないのだから、優しくしないで。もう婚約者ごっこはおしまい! 事件は解決したのだから、もう好きなふりなんてしなくていいのよ!」

「詩乃、ちょっとまって。落ち着いて」

慧さんは頭を抱える。
困ればいいんだ。最後くらい、困らせてやってもバチはあたらない。

「いや。落ち着いてなんかいられない。だって、わたしたち別れるじゃない!」

どなったら息が乱れた。はぁっと引き付けながら呼吸を整える。

「ねぇ、……別れなくちゃいけないんだよ……こんなに好きなのにどうしたらいいの……?」

子どものように泣いた。

「ああ、もう……!」

苛つきを吐き出した言葉とともに、腕を引っ張られる。
後頭部をがしりと掴まれたと思ったら、キスをしていた。

「――――んんっ⁉」

そのままベッドへと倒れる。

「あ、ふぁ、ちょっ……」

強引で、力強くて、獣のようだった。
なんども角度を変えて貪る。
こんな激しいキスは、あの夜だってしなかったのに。

(――――酸欠になりそう)

「ま、まっ……」

待ってととの一言が言えない。
息継ぎの合間に抗議をするが、すぐに塞がれてしまって喋れない。
わたしがとろけてぐったりとしたころ、ようやく慧さんは唇を離した。
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