激情を秘めた警察官はウブな令嬢を娶り溶かす~1年で婚約破棄するはずが、敏腕SPの溺愛が止まりません~
「……本当に困った子だ。俺が君を愛していないって? どうしてそんな思考になる」
唇はふやけてしびれを伴った。
「だ、だって」
「だってじゃない、互いに愛を確かめ合ったあの夜はなんだったんだ」
「それは……」
わたしが迫ったから、ついうっかりではないの?
「俺が、好きでもない女を抱く男に見えるんだな?」
慧さんは怒っていた。
自分のことばかり悲観して、慧さんの事を考えていなかったかもしれない。
大人だから。慣れているから。
そんな理由を付けて、なぜ優しくしてくれるのか、言い訳ばかりして考えようとしなかった。
本当は、――――どんな気持ちで抱いてくれたの?
「も、モテる、し。大切な人を作る気はないって聞いていたから。その……」
言い訳のようにぼそぼそというと、慧さんは神妙な顔になった。
「くそっやっぱり海吏のせいか。余計な事を言うから。詩乃を混乱させやがって。今度会ったら懲らしめてやる」
舌打ちをした慧さんに目を丸くする。
たしかに、海吏さんのお店で聞いたことではあるけれど。