ねぇ…俺だけを見て?
政略結婚
「初めまして、美崎 煜馬です」

「こちらこそ、初めまして!
田野 史依です!」


(ちっちゃい女……子どもみたい)
(大きいなぁー
それに、やっぱカッコいいなぁー/////)

これが、お互いの第一印象。



二人は政略結婚の為の、見合い中だ。

美崎化粧品と田野ビューティーはお互いに化粧品を扱う会社で、今回美崎化粧品が田野ビューティーを吸収合併することになったのだ。

田野ビューティーの経営難が大きな理由だが、田野ビューティーには一つだけ、どの化粧品会社にもない独自の商品があり、それを手に入れる為の合併なのだ。

そして、煜馬と史依は親に言われるがまま“半ば強制的に”結婚させられるのだ。

煜馬はとにかく仕事が好きで、将来継ぐことになる会社が大きくなるなら…と、特に嫌がることもなく受け入れている。

そして、史依も……
以前、親に言われて出席したパーティーで煜馬を見かけてから秘かに憧れていたからか、とても意欲的だ。



「史依…さん?ちゃん?」
「はい!
史依で構いません!
煜馬さん!」

「あ、じゃあ……フミって呼んでいいかな?
呼びやすいし」

「はい!」
嬉しそうに微笑む史依に、煜馬は胸がキュッと小さく痛んだのを感じる。

「じゃあ、俺のことも“煜馬”って呼んでいいよ!」

「え?あ、いや、呼び捨てなんて……
旦那様になる方にそれは……」

「旦那になるから、いいんだよ?」

「そもそも、男の人を呼び捨てで呼んだことがなくて……」
「そうなの?
元彼とかも?」

「はい。だいたい~さんとか、~くんとかでした」

「そっか。
じゃあ…名前はいいから、敬語やめてくんない?
あんま、好きじゃなくてさ。
仕事じゃないんだし。
………って、仕事みたいなもんか…!
俺達は、好きでもないのに“結婚”すんだから」

「え?私は、好きです!」

「え……」

「え?」

「………」
「……あ、いや、ち、ち、違うんです!
そうゆう意味じゃなくて……!
あ、でも、そうゆう意味?
あ、いや、その…//////
ごめんなさい…」

さっきまで、ニコニコしていた史依。
急に恥ずかしそうに俯いてしまう。

「………」
煜馬は無意識に、史依の頭を撫でた。

「え?煜馬…さん?」
「え?あ、ごめん!」

今度は、煜馬が視線を逸らす。

「フフ……」
史依が笑った。
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