ねぇ…俺だけを見て?
本音
夜が明けて、スマホのアラームが鳴る。

煜馬の腕の中でもぞもぞと動き、起き上がる。
そしてアラームを切った。

煜馬を起こさないように静かにベッドを下り、ベッドルームを出た。

史依がベッドルームを出ると、煜馬の目がパチッとあく。
「あーあ…行っちゃった……」

ベッドの上で伸び、ゆっくり起き上がった。
史依が寝ていた所をなぞる。


何故だろう━━━━━
今まで感じたことのない、欲が溢れてくる。


離れたくない。
ずっと、くっついていたい。

「…………重症だな…俺…(笑)」
自嘲気味に笑った。



しばらくして煜馬は、キッチンにいる史依の所へ向かった。
「おはよ、フミ」
調理をしている史依の後ろから抱き締め、頬にキスをした。

「わっ…!!煜馬さん!?
お、おはよう/////」
「あ、赤くなった!可愛い!」
そう言いながら、頬にキスを繰り返す。

「煜…馬、さ…くすぐった、い…よ……」
「フフ…可愛い…好きだよ、フミ…!」
ひとしきりキス責めをすると、洗面所に向かった煜馬。

「な、な、なんだったの?」
まるで別人のような煜馬に、史依は戸惑いを隠せずにいた。


この日から煜馬が一変した。

朝起きてくると、後ろから抱き締められキス責めをされる。
朝ごはんをしっかり食べ、準備を済ませた煜馬が心底名残惜しそうにまたキス責めをして仕事に出ていく。

昼休みにはほぼ毎日電話がかかってきて、弁当の感想やさりげなく史依が何をしていたか、午後は何をするのかを聞かれ、友人と会ったり外出することがわかると“それ、男いる?”と聞かれる。
買い物も“なんかあったらすぐに電話して!家に帰りついたら連絡ちょうだい”と言われる。

仕事から返ってきてすぐ、やっぱりキスを繰り返し、ずっとくっついて話をする。

さすがに風呂は別々だが、寝る時は煜馬のダブルベッドで包み込むように抱き締められながら頭を撫でられて眠りにつくのだ。


まさに、ラブラブな夫婦その物だった。

最初はあまりの変わりようにかなり戸惑ったが、憧れていた煜馬とこんな風になれて幸せだ。


だが━━━━━━

「━━━━煙草?」
「うん…」

合併後、美崎化粧品が新しくなるのが数日後に控えた日。

史依は、友人で田野ビューティーの社員だった・関川(せきかわ) 珠稀(たまき)とランチ中。
珠稀は、来月から美崎化粧品にそのまま移るので今は有給休暇中だ。

ちなみに安吾に紹介しようとしているのが、珠稀のことだ。
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