ねぇ…俺だけを見て?
キッチンの換気扇の下で、ミネラルウォーターを飲みながら煙草を吸う。

頭を冷やさないと、本当に犯しそうだ。

「あーもー、くそっ!」
煜馬は、必死に理性を保ち堪えていた。


煙草を吸い、ベッドに戻ろうとする。
「ん?ノート?」

キッチンの引き出しから、はみ出ているノートを見つける。
そのノートは、史依のマル秘ノートだ。

「マル秘?
え?どう見ても、フミのだよな……?」

“マル秘”と書いていると言うことは、見てはいけないものだろう。

「でも、気になる……
………ちょっとだけ…」
煜馬は、マル秘ノートを開いた。

「え?
日記?」

そこには、ここに住み始めてからの史依の日記だった。


【◯月×日。
今日から“美崎 史依”になった!
野菜スープ、好評。(味付けは、これでOK!)
でも、一つ気になる。
車に乗ってガムを噛んでいた、あの時。
あの間は、なんだったの?】


【◯月×日。
今日のハンバーグ。
少し焦げちゃった。
でも、煜馬さんは“美味しい、美味しい”った食べてくれた!良かった!】

【◯月×日。
今日、煜馬さんと“本当の”夫婦になれた。
嬉しい!!!煜馬さーん、私も好き~!!
これから、煜馬さんと色んなことを乗り越えていきたいなぁー
よし!煜馬さんの自慢の奥さんになるぞ~!】

煜馬は、文字をゆっくりなぞる。
「俺も、スゲー好きだよ」

【◯月×日。
煜馬さんの嫌いな物。
人参、グリーンピース、ほうれん草。
たぶん……
よし!上手く誤魔化せるようにしよう】

「嘘…バレてる…(笑)」

【◯月×日。
今日の人参のハンバーグ、美味しそうに食べてた!
嬉しい!人参が入ってたこと、バレてなかった!】

「マジかよ!?全然、気づかなかった!(笑)」

【◯月×日。
今日の煜馬さん、辛そうだったな……
会社で何かあったのはわかるのに、何も出来ない。
はぁー、私は無力だな……】

その後の内容も、よく煜馬の表情やふとした時の仕草を見てる故の内容だった。

煜馬は、愛しさが増していた。

「ほんと、敵わねぇな!俺の嫁には!(笑)」

そしてここ二・三日の内容………

【◯月×日。
今日も、何もなかった。
やっぱ、私って魅力ないんだ……
世の奥様は、どんな風に誘ってるのかな?】

「え………
………って!やっぱあれ、誘ってたのかよ……!?(笑)」

だったらありのまま、フミを抱けば良かった……
< 15 / 29 >

この作品をシェア

pagetop