ねぇ…俺だけを見て?
「“政略結婚”なんですよね?」

「最初はな」

「“最初”は?」

「あぁ。本当に最初だけ。
あっという間にフミに惚れて、今ではお互いに愛し合ってる」

「本気なんですか?」

「そうだよ。
だから君の入る隙、全くないよ」

「わかってますよ。
史依は、真っ直ぐだから」

「そうだな」

「あ、でも!」
「ん?」

「史依は“僕の友人”ってこと、忘れないでくださいね!」
「は?」

「史依、言ってくれました。
“お友達として、また遊ぼうね!”って。
だから、邪魔しないでください」

「は?何言って━━━━━━」
「さっき、久しぶりに史依に連絡しました。
“ランチ、一緒にどう?”って」

豹典は、頭を下げ副社長室を出た。

「………何なんだよ、あいつ…」


「ふぅー」
副社長室のドアを背に、寄りかかり息を吐いた豹典。
スマホを確認する。

豹典のメッセージへの返信がきていた。

『久しぶり!三人でなら、大丈夫だよ!
何時に何処に行ったらいいかな?』
「良かった!
じゃあ12時半に、会社に近くの駅でいいかな?」
『わかった(^^)』


12時20分頃。
豹典と珠稀が駅に向かうと、史依が待っていた。

史依が田野ビューティーを退職して、約一年。
豹典からすれば、久しぶりに見る史依。

一年前と変わらない、可愛らしい史依がそこにいた。

駆け寄り、声をかける。
「史依!」
「あ、豹くん!久しぶり!」

「久しぶり!」
「元気そうだね!」
「うん、史依も!」

「うん!」
「あ………結婚…おめでとう…!」
「ありがとう!
あ、そうだ!旦那さんの秘書になったって聞いたんだけど……」

「うん」
「よろしくね!」

「もちろん!」
微笑み合う、史依と豹典。



「━━━━━━相変わらずね!二人。
こんな言い方、ダメだけど……
なんで、別れたの?」
定食屋に入った、三人。
珠稀が、少し切なそうに言った。

「まぁ…色々ね……」
豹典の表情が、曇った。

「でも正直、びっくりした。
史依、豹に振られてかなり落ち込んでたのに、好きな人が出来たって聞いた時は…!」

「それは━━━━━━」
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