ねぇ…俺だけを見て?
「え…」

「なんか、私達…可笑しい…!(笑)」
「フッ…!そうだね!」
クスクス笑う史依に、煜馬も噴き出した。

「あの、煜馬さん」
「ん?」

「私以前、煜馬さんをパーティーでお見かけしてたんです」
「へぇー、そうだったんだ」

「その時から、その…憧れてて…/////
だから、嬉しいって意味でその…/////
…………煜馬さんが、仕事で私との結婚を決めたことはわかってます。
私、頑張りますから!
好きになってもらおうなんて、おこがましいけど……
せめて煜馬さんに、嫌われないように」

ドクン…と煜馬の胸が高鳴った。


あ……ヤバい……
予感がする━━━━━━━

微笑み拳を握る史依に、煜馬は早くも心が変わるのを感じていた。



最初は、ただ住み込みの家政婦を雇う感覚でいた。
仕事が楽しい今、恋愛なんて邪魔なだけだから。

女は、めんどくさい。
今までも、恋人がいたことはある。
学生時代は、どちらかと言うと恋愛を楽しんでいた。

しかし大学を卒業し親の会社に就職すると、御曹司な上にかなりのイケメンの煜馬に、様々な人間がすり寄ってきた。
中には、敵意を剥き出しにしてくる者もいた。

そんな中、社員や友人に紹介された女性と交際していたこともある。
しかし“会いたい”としつこく連絡してきたり、デートでは“あれ買って”“ここ行きたい”など、振り回されたのだ。

そんな社員達や恋人に嫌気がさし、仕事に没頭するようになった。


そんな時の、見合い話だった。



目の前で、微笑み見上げる可愛らしい史依。
淡い痛みだった胸は、次第にドクドクと鋭く痛んでくる。

煜馬は、頭を横に振った。

「煜馬さん?」

「ううん。
まぁ、気楽にやろうよ!
あ!敬語!なしね!
よろしく、フミ!」

「あ、はい……じゃない。
うん!煜馬さん!」

握手を求める煜馬の大きな手を、史依の小さな手で握り返した。
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