ねぇ…俺だけを見て?
それから二人は話し合った。

朝食は、ガッツリした食事。
昼食は、基本的には弁当(大きめの弁当)を作り、いらない時は事前に言う。
夕食は、スープのみ(毎日、具材を変える)。

「フミはないの?」
「うーん…
あ!
私、お酒あんま好きじゃなくて……
もし夜、晩酌とかするなら、私はお茶にさせてほしいな」

「大丈夫!家では飲まないから、俺。
飲むなら、店で飲みたい!」
「そっか。良かったぁー
ウチの父は晩酌する人で、母がいつも付き合わされてたの。
だから、そんなもんって思ってて……」

「フフ…大丈夫!
よし!こうやって、お互いその都度思ったことは伝え合おう。
俺も、柔じゃないから!フミのこと、受け止めるよ!」
「うん!」


マンションに帰ってからも、二人は沢山話をしていた。
アイランドキッチンで調理する史依に、カウンターに座った煜馬が話しかける。

とても、和やかな雰囲気が流れていた。

「━━━━ご馳走様!旨かったよ!」
「ほんと?良かった!
味、薄すぎなかった?
なるべく、胃に負担がないように薄味にしたんだけど……」

「ほんとに、旨かったよ!ありがとう!」
史依の頭をポンポンと撫で、食器を流しに持っていく煜馬。

ここにはダイニングテーブルがない。
リビングダイニングの広い空間に、ソファとローテーブルとテレビしかない、シンプルな部屋。

その為、カウンターで並んで食べている。

“ダイニングテーブル買おうか?”と煜馬が提案したが、史依は……
「こうやって、並んで食べるのも素敵。
それに煜馬さんが、近くに感じるから」
と微笑んだ。


「俺、明日の仕事の準備があるから部屋に行くね!」
「うん!
あ、お風呂、沸かしておくね!」
「ん!準備したら、入るよ!」

煜馬が出ていくと、史依は一冊のノート(表紙には、マル秘と書いてある)を出した。

【◯月×日。
今日から“美崎 史依”になった!
野菜スープ、好評。(味付けは、これでOK!)
でも、一つ気になる。
車に乗ってガムを噛んでいた、あの時。
あの間は、なんだったの?】

書き終え、キッチンの引き出しにしまった。


一方の煜馬。
部屋に入り、すぐに鞄から煙草を取り出した。
ベランダに出て、吸う。
「んーー!旨っ!!
…………灰皿、どっかに隠さないと……!」

煜馬は、実はヘビースモーカー。
さっきまでかなり、我慢していたのだ。
本当は車に乗ってすぐ吸いたかったのだが、史依の手前どうしても吸えなかった。
だから、ガムを噛んで凌いだのだ。

「ま、いいか。
この部屋は仕事の書類があるから、掃除は自分でするって伝えたし」

あっという間に一箱も吸ってしまい、煜馬はバスルームに向かったのだった。
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