記憶屋【先輩・後輩篇】
その夜は寂しくて切なくて悲しくて眠れなかった。

「うぅぅぅぅ…」

涙がとめどなく流れては枕を濡らした。

もう2度と先輩には会えない。

あの笑顔を2度と見る事は出来ない。

怒った顔も泣きそうな顔もふざけた顔もとぼけた顔も照れた顔も2度と見る事は出来ない。


あれから1ヶ月以上が経過した。

記憶を失った先輩が僕の所に来る事は1度たりともなかった。

今頃先輩は短大生として新生活をスタートしてる。

沢山の友達を作り、好きな人も出来て、恋人もいるかもしれない。

「良かった。これで良かったんだ」

僕は自分に言い聞かせるようにそう言った。
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